結論:ルールは宿ごとに違う。「予約で確かめる・迷ったら聞く」が基本
犬と泊まれる宿のマナーは、ひと言でいえばほかのお客さんと宿の人に迷惑をかけないことです。そのうえで、どこまで犬と一緒に行けるか、ベッドに上げてよいか、お風呂を使えるか、といった細かいルールは宿ごとにまったく違います。
- 予約のときに、犬の犬種・体重・頭数・性格を正直に伝え、ルールを確かめる
- チェックインのときに、館内で犬が行ける場所・行けない場所を聞く
- 迷ったら、自分で判断せずに宿の人に聞く
山梨県の観光推進機構が公開している「愛犬同伴のお泊りマナー」(NPO法人日本ドッグマナー協会監修)も、最初の項目に「泊まれる頭数、サイズ、必要な証明書、ルールなどを確認」を挙げています。宿の形もいろいろで、「食堂はだめ」など、犬と入れる範囲が限られている宿もあると書かれています。
法律の面でも、動物愛護管理法は、飼い主が動物によって人に迷惑をかけないように努めることを求めています。環境省の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」では、犬の飼い主は、たびたびの鳴き声やふん尿の放置で周りの人の暮らしに大きな迷惑をかけないこと、人に迷惑をかけないようしつけをし、飼い主の「やめて」に従うよう訓練に努めることが書かれています。旅先の宿でも同じ考え方です。
この記事では、まず実際の宿の規約と犬ふぁんのデータで「どんなルールが多いか」を見てから、部屋・食事処・お風呂・共用部の場面ごとのマナー、出発前の練習の順にまとめます。
犬ふぁんのデータで見る、宿のルールの傾向
予約サイトの注意事項に書かれていること
犬ふぁんには、楽天トラベルに載っている犬と泊まれる宿2,500軒の公開情報があります。宿の「注意事項」の文章に、次のようなことが書かれている宿の数を数えました。
調べると、ワクチンの証明について書いている宿が5.1%(128軒)、頭数の制限が4.0%(101軒)でいちばん多く、ベッドや食事処のルールを書いている宿は8軒ずつ(0.3%)しかありませんでした。ルールごとの数字と、実際の宿の規約の例は、データ記事「犬と泊まれる宿のルール」でくわしくまとめています。
数字から言えることは2つです。
- 予約サイトの注意事項だけでは、ルールはほとんどわからない。 ベッドや食事処のルールを書いている宿は、2,500軒のうち8軒ずつしかありませんでした。宿の公式サイトを見るか、電話やメールで聞くのが確実です
- 書いてある中では、ワクチンの証明と頭数が多い。 つまり、多くの宿が予約の段階でいちばん気にしているのは「病気を持ちこまないか」「何頭来るか」です。証明書の写しと頭数・大きさは、予約のときに伝えられるようにしておきましょう
犬の料金とチェックインの時刻
注意事項に「小型犬◯円」のように犬の料金が書かれていた宿で、1泊あたりの犬の料金の真ん中の値(中央値)は次のとおりでした。
| 犬の大きさ | 料金が書かれていた宿(n) | 1泊の犬の料金の中央値 |
|---|---|---|
| 小型犬 | 28軒 | 2,000円 |
| 中型犬 | 26軒 | 2,500円 |
| 大型犬 | 30軒 | 3,300円 |
料金が書かれていた宿は30軒前後と少ないので、ざっくりした目安として見てください。宿の料金の全体は、別の記事でまとめています。
チェックインの時刻は、15時台が78.7%、チェックアウトは10時台が73.8%でした(どちらもn=2,500)。チェックインからチェックアウトまでのあいだに、夕方の散歩・夕食・夜・朝の散歩・朝食と、犬と過ごす場面がひととおりあります。このあと、その場面ごとにマナーを見ていきます。
実際の宿の規約に多いルール
公式サイトで規約を公開している宿の例を2つ見てみます(どちらも公式の案内を要約)。
星野リゾート「愛犬ルーム利用規約」
- 基本的なしつけ(噛まない・むだ吠えしない・飛びつかない・排泄)ができていること
- 狂犬病予防注射を毎年受けていること、5種以上の混合ワクチンの接種から3年未満であること。チェックインのときに証明書(コピーや画像も可)を出す
- 病気やけがの治療中・養生中、生理中と生理後2週間以内、妊娠中は利用できない
- 客室やバスルームで、シャンプー・トリミング・ブラッシングをしない
- トイレ以外で排泄したら、飼い主が片づけたうえでスタッフに連絡する
- 犬が部屋でひとりになるときは、ケージに入れる
- 犬がほかの人にけがをさせたり物を壊したりしたときは、飼い主が責任を負う
THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田「Using the Dog Villa Suites」
- 犬が入れるのは、ドッグヴィラの客室とテラス・専用ドッグラン、森の散歩道、一部のラウンジ。レストランのある本館などには入れない
- 客室の中でも、浴室や人の寝具を犬に使わせない
- 部屋に入るときは足をきれいにする。ブラッシングやトイレは、ケージの中かトイレシートの上で
- 汚したり壊したりしたときは、チェックアウトのときに伝える
- 犬だけを部屋に残すときは、ケージに入れる
- 発情中・妊娠中、ノミ・ダニなどがいる、うつる病気がある犬は泊まれない
2つの宿は場所も形もまったく違いますが、「犬だけで部屋に残すときはケージ」「部屋で汚したら自分で片づけて伝える」「人の寝具や浴室は犬に使わせない」「ワクチンと体調の条件」は共通しています。これが、犬と泊まれる宿のルールの「最大公約数」と考えておくと、はじめての宿でも大きく外しません。
部屋でのマナー
ベッドやソファに上げない(上げてよいと言われた宿以外)
やまなし観光推進機構のマナー10か条では、「人間用のベッドには上がらせず、寝るのは床で」としています。ケージは寝るときにも便利で、犬用の寝具を持っていくのもよいとされています。
宿によっては、犬用のシーツやカバーを用意して「上げてよい」としているところもあります。ルールがわからないときは、上げないのが基本です。
トイレの失敗に備える
慣れない場所では、ふだん失敗しない犬でも粗相をすることがあります。
- トイレシートを多めに持っていき、部屋に着いたらすぐトイレの場所を決める
- マーキングしやすい犬は、マナーウェア(マナーベルト・おむつ)をつける
- 失敗したら、すぐに片づけ、宿の人に正直に伝える
汚れを隠したりそのままにしたりするのが、宿にとってはいちばん困ります。星野リゾートの規約のように「片づけたうえでスタッフに連絡」を決まりにしている宿もあります。早く伝えれば、宿のほうでも処理がしやすくなります。
犬だけで部屋に残すときはケージ
慣れない部屋に犬だけを残すと、不安で吠え続けたり、物をかじったりすることがあります。上の2つの宿はどちらも「ひとりにするときはケージ」としています。やまなし観光推進機構の案内では、犬の留守番そのものを禁止している宿もあるので、必ず事前に確かめるよう書かれています。
夕食や大浴場で部屋を空ける時間が長くなりそうなら、その間どうするかを予約の前に考えておきましょう。
部屋でシャンプーやブラッシングをしない
客室やバスルームでのシャンプー・ブラッシングを禁止している宿があります。抜け毛が排水口や寝具に残ると、次のお客さんが困るからです。体を洗うのは出発の前に家で済ませ、ブラッシングもしておくと、宿で抜け毛が出にくくなります。
鳴き声に気をつける
隣の部屋には、犬が苦手な人や、小さな子どもがいるかもしれません。
- チェックインの前に散歩をして、体を動かしておく
- 家で使っているクレートや毛布を持っていき、「ここは安心できる場所」をつくる
- チャイムや廊下の足音に反応しやすい犬は、ドアから離れた場所にクレートを置く
食事処・レストランでのマナー
犬と一緒に食事ができるかどうかは、宿でいちばん差が出るところです。犬は部屋で待つ宿、個室の食事処なら一緒に行ける宿、食堂全体が犬同伴でよい宿など、いろいろあります。
一緒に行けるときは、次のことを守りましょう。
- リードは短く持ち、犬が歩き回ったり、ほかのテーブルに近づいたりしないようにする
- 犬はテーブルやいすに上げない。足元のマットやカート、クレートで待たせる(宿の決まりに従う)
- 人の料理を犬に与えない。犬用のメニューがある宿ではそれを使う
- 犬が落ち着かないときは、いったん外に出て気分を変える
やまなし観光推進機構の案内でも、食堂では「犬が苦手なひともいることを忘れない」よう呼びかけています。食事の時間が長い宿では犬が退屈しやすいので、食事の前に散歩しておく、かじって遊べるものを持っていく(食事処で与えてよいか確かめる)などの工夫が役立ちます。
お風呂・温泉でのマナー
人が使う大浴場や露天風呂に、犬を連れて入ることはできないと考えておきましょう。THE HIRAMATSUの例のように、客室のお風呂も犬に使わせないと決めている宿もあります。
犬と一緒にお風呂の時間を楽しみたい、犬の足や体を流したい、というときは、次のような設備がある宿を選びます。
- 犬の足洗い場やシャワーがある
- 犬専用の温泉やバスがある
- 犬と一緒に使ってよいと決められた貸切風呂がある
どこまで犬と使ってよいか(入れてよいのは足だけか、体を洗ってよいか、湯船に入れてよいか)は、宿ごとに必ず確かめてください。使ったあとは、抜け毛が残っていないか見て、できるかぎり片づけておきます。
また、自分が大浴場に行くあいだ、犬を部屋に残してよいかも確かめておきましょう。留守番ができない犬なら、部屋にお風呂がついた宿を選ぶと安心です。
共用部・散歩・チェックアウトのマナー
廊下・ロビー・エレベーター
やまなし観光推進機構の案内では、宿の中でも共用スペースではリードをつけ、目を離さないことを挙げています。
- 抱っこやカート・ケージでの移動が決まりの場所では従う
- ほかのお客さんとすれ違うときは、犬を自分の体の内側に寄せる
- エレベーターでほかの人と乗り合わせそうなら、次を待つのも一つの方法
- 柱や植木にマーキングさせない
散歩
- うんちは必ず持ち帰り、宿の決まりどおりに捨てる
- 宿の庭や駐車場で、トイレをさせてよい場所かを確かめる
- 夜や早朝の散歩は、近所の家に気をつけて静かに
- 部屋に入る前に、足をふく・洗う
宿のドッグラン
ドッグランがある宿では、ほかの宿泊客の犬と一緒になることがあります。犬ふぁんの宿のデータでは、ドッグランがある宿として情報が載っているのは9.4%(2,500軒のうち、タグでわかった宿だけの数)でした。
- 入る前に、中の犬の様子を見て、相手の飼い主さんにひと声かける
- 飼い主は犬から目を離さない(THE HIRAMATSUでは、飼い主が一緒のときだけドッグランを使えるとしています)
- 相性が合わないときや、自分の犬が興奮しすぎているときは、時間をずらす
チェックアウトのとき
やまなし観光推進機構の10か条の最後は「チェックアウト前に客室の状態を確認」です。
- 床やソファについた抜け毛を、粘着ローラー(コロコロ)で取る
- 使ったトイレシートやうんちは、宿の決まりどおりに捨てる
- 汚したり壊したりしたものがあれば、正直に伝えておわびする
規約に「損害はすべて補償」と書いている宿もあります。黙って帰って後から連絡が来るより、その場で伝えたほうが話は早く済みます。「また来てほしい」と思ってもらえる使い方が、犬と泊まれる宿が増えることにもつながります。
予約前・出発前のチェックリスト
予約のときに確かめること
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 犬種・体重・頭数の条件 | 大きさや頭数で泊まれないことがある |
| ワクチンの条件と証明書の出し方 | 混合ワクチンの種類や接種からの期間を決めている宿もある |
| 犬の料金 | 1頭ごと・1泊ごとが多い。施設で払う宿もある |
| 犬と行ける場所 | 食事処・ラウンジ・庭・ドッグランなど |
| 留守番のルール | 禁止の宿、ケージなら可の宿がある |
| ベッド・ソファ・お風呂 | 上げてよいか、使ってよいか |
| 持っていくもの | ケージ、トイレシート、マナーウェアなど |
出発前にやっておく練習
| 練習 | 宿で役立つ場面 |
|---|---|
| クレートで落ち着く | 留守番、車の移動、食事処、寝るとき |
| 「マテ」「フセ」 | 食事処で足元に待たせる |
| 名前を呼んだら飼い主を見る | すれ違いや、ほかの犬に気をとられたとき |
| 知らない場所でのトイレ | 部屋や宿の庭でのトイレ |
| 家族以外の人に慣れる | チェックインや宿の人とのやりとり |
やまなし観光推進機構の案内では、出発の前に、鳴かせない・跳びつかせない・粗相をさせないといった基本の練習をしておくこと、出発直前に体調をくずしたら旅行をやめることも考えること、発情期に入ったらほかのオス犬を興奮させるので注意すること、が書かれています。体調のことで迷うときは、動物病院に相談してください。
吠えやすい、興奮しやすいなど、自分たちだけで練習するのが難しいときは、しつけ教室で相談するのも一つの方法です。
よくある質問
Q犬をベッドに上げてもいいですか?
上げないのが基本です。人の寝具を犬に使わせないと決めている宿が多く、犬用のシーツを用意して「上げてよい」としている宿は一部です。わからないときは宿に聞いてください。
Q部屋で粗相をしてしまったら?
すぐに片づけて、宿の人に正直に伝えましょう。規約で「片づけたうえでスタッフに連絡」と決めている宿もあります。
Q夕食のあいだ、犬を部屋で待たせてもいいですか?
宿によって違います。ケージに入れれば留守番できる宿もあれば、留守番自体を禁止している宿もあります。予約の前に確かめてください。
Qワクチンの証明書は原本が必要ですか?
宿によります。星野リゾートの規約のように、コピーや画像でよいとしている宿もあります。何が必要かは予約のときに確かめ、スマホに写真を入れておくと安心です。
Q犬が夜に吠えてしまったら?
まずは犬を落ち着かせ、クレートに入れる、静かに声をかけるなどしましょう。吠えが続きそうなら、宿の人に相談してください。
参考にした情報
- 動物の愛護及び管理に関する法律(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/348AC1000000105
- 環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_r02_21_1.pdf
- 公益社団法人やまなし観光推進機構「愛犬同伴のお泊りマナー」(富士の国やまなし観光ネット) https://www.yamanashi-kankou.jp/oneforwan/travel/index.html
- 星野リゾート「愛犬ルーム利用規約」 https://hoshinoresorts.com/ja/sp/petroompolicy
- THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田「Using the Dog Villa Suites」 https://global.hiramatsuhotels.com/miyota/wp-content/uploads/sites/3/2024/02/DV_EN_Using-the-Dog-Villa-Suites_240123.pdf
- 犬ふぁん 犬と泊まれる宿のデータ(楽天トラベル掲載の2,500軒の公開情報、2026年10月10日時点)
(2026年10月に確認)
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