まず結論:譲渡会は「会う場」。迎えるまでには何段階か手順がある
保護犬を迎えたいと思ったら、まず「どこから迎えるか」を決め、近くの譲渡会に行ってみるのが近道です。
- 迎える先は2つ。 都道府県や市の動物愛護センター(自治体)と、NPOやボランティアの保護団体です
- 譲渡会は、犬と会って話を聞く場。 その日に連れて帰る形ではないのがふつうです。大阪府動物愛護管理センターも、犬と会う「マッチング」の日には原則として譲渡しないと案内しています
- 申し込みの条件がある。 年齢、家族の同意やアレルギー、ペット可の住まい、高齢・一人暮らしなら協力者の同意など。自治体・団体ごとに違うので、先に案内を読みます
- 自治体は講習会が条件のことが多い。 神奈川県はオンラインで受けられ、受講証は3年間有効です
- 迎えたら30日以内の手続きがある。 市区町村での犬の登録と、マイクロチップが入っている犬の変更登録です
次にすることは、近くの譲渡会を一覧で探し、住んでいる地域の動物愛護センターの譲渡の案内を読んでおくことです。家族で話し合っておくこと(下の章)を先にそろえておくと、譲渡会で聞くことも決まります。
自治体と保護団体、どちらから迎える?
どちらがよい・悪いではなく、流れと会える犬の様子が違います。
| 見ること | 自治体(動物愛護センターなど) | 保護団体 |
|---|---|---|
| 会える場所 | センターでの面会、自治体が開く譲渡会 | 団体の譲渡会、シェルター、団体のサイト |
| 申し込みの前に | 講習会や事前の調査が条件のことが多い | アンケートや申込書、面談 |
| お試しの飼育(トライアル) | 自治体による | 団体による(取り入れているところがある) |
| 譲渡のときの費用 | 自治体の案内で確かめる | ワクチンや医療にかかったお金の一部などを求める団体がある |
| 迎えたあと | 家庭訪問や相談に応じる自治体もある | 団体によって相談や報告のお願いがある |
こんな人は、こちらから
- 自分の住む地域のセンターで、決まった手順で進めたい → 自治体。講習会の日程を先に確かめます
- いろいろな犬に会ってから考えたい、週末に動きたい → 保護団体の譲渡会。開催日と参加する犬を一覧や団体のサイトで確かめます
- お試しで一緒に暮らしてから決めたい → トライアルのある団体かどうかを聞きます
環境省の統計では、令和6年度に全国の自治体が引き取った犬は17,399頭で、そのうち8,797頭が新しい飼い主に譲渡されています。自治体からも、毎年たくさんの犬が新しい家族のもとへ渡っています。
自治体から迎える流れ:大阪府の例
大阪府動物愛護管理センターは、犬を譲り受けるまでの流れを6つの段階で案内しています。
- 申し込み:申込書・基準チェック表・引受人確認書を窓口・郵送・FAX・メールで出すか、大阪府のオンライン申請で申し込む
- 申し込み内容の確認:審査のうえ、電話かメールで連絡が来る
- 譲渡前調査:犬を飼う場所の確認と聞き取り(平日のみ)
- 譲渡前講習会:センターの講習会を受ける
- マッチング:予約して、希望する犬と会う。講習会の日に会うこともできるが、原則その日には譲渡しない
- 譲渡日:「譲渡申請及び誓約書」を出して譲り受ける。首輪やリードを持っていく
借家や集合住宅で飼う予定なら、その家で動物を飼ってよいとわかる規約などのコピーを出す必要があります。平日の調査があるので、仕事をしている人は日程の調整も考えておきましょう。
講習会をオンラインで受けられる自治体も
神奈川県動物愛護センターでは、犬・猫を譲り受ける人は譲渡前講習会を受けることになっていて、オンラインで受けられます。電子申請で申し込み、届いたメールのURLから動画を見て、受講証を申請する流れです。受講証は視聴日から3年間有効で、そのあとセンターで面接と譲り受けの手続きをします。
申し込みの条件の例:柏市
柏市の動物愛護ふれあいセンターは、譲渡を希望する人に、たとえば次のことを求めています(公式ページより要約)。
- 20歳以上であること
- 家族にアレルギーの人や動物が苦手な人がいないこと
- 集合住宅や賃貸住宅なら、動物を飼うことが認められていること
- 65歳以上の人や一人暮らしの人は、飼うことに協力してくれる人の同意があること
- 不妊去勢手術をすること、首輪やマイクロチップなどで飼い主がわかるようにすること
- えさ代や治療費、ワクチン代などの費用を知っておくこと
- 譲渡後の訪問に対応できること
柏市は、犬や猫の寿命は平均10年〜15年だとして、最後まで飼い続けることを求めています。住んでいる地域の動物愛護センターの名前と「譲渡」で検索すると、その地域の条件が見つかります。
保護団体の譲渡会の流れ
団体ごとに違いますが、次のように進むことが多いです。
- 団体のサイトやSNS、イベントの一覧で、譲渡会の日時・場所と、参加する犬を確かめる
- 譲渡会に行き、犬と会う。スタッフに性格や暮らし方を聞く
- 申し込む(アンケートや申込書)
- 面談や、家の様子の確認
- トライアル(お試しの飼育)
- 正式に譲渡
費用の内訳と条件は、申し込む前に必ず確かめましょう。 何にいくらかかるのか、トライアルの期間、合わなかったときはどうなるのか。わからないことは、遠慮せずに聞いてかまいません。
犬ふぁんでは、自治体や主催者の公式ページで確かめた譲渡会を、開催日の近い順に探せます。
譲渡会の当日に気をつけること
- 自分の犬は連れて行かないのが基本。 先住犬との相性を見たいときは、団体に相談します
- 犬に急に手を出さない。 人の手や大きな音をこわがる子もいます。さわる前にスタッフに聞きます
- 1回で決めなくてよい。 気になる子がいても、家族で話し合う時間をとってかまいません
- 家族みんなで行く。 譲る側は「家族全員で飼うか」を見ているので、できれば一緒に会いましょう
譲渡会に行く前に、家族で話し合っておくこと
香川県の資料「新しい飼い主の見極めチェックポイント」では、譲る側が見るポイントとして次のようなことが挙げられています。譲る側はこうした点を見ているので、先に家族で答えをそろえておくと、申し込みや面談がスムーズです。
- ペットを飼える住まいか。引っ越しや転勤の予定はないか
- 家族全員で飼うか。動物アレルギーの家族はいないか
- 飼い主もペットも年をとっていくが、大丈夫か
- 近所に迷惑をかけない環境か
- 暮らし方が、犬を飼うことと合っているか(留守の時間、散歩の時間)
- 最後まで飼うことを考えているか。ワクチンや治療などの費用も考えているか
お金の目安は犬を飼う初期費用と毎月のお金、留守番の時間の考え方は子犬の留守番は何時間まで?が参考になります。
譲渡会で聞いておきたいこと
- 推定の年齢、体重、性格(人・ほかの犬・子どもへの反応)
- これまでの暮らし(室内か屋外か、トイレの習慣、散歩の様子)
- ワクチン、不妊去勢手術、マイクロチップの状況
- 苦手なもの、気をつけてほしいこと
- 今食べているフードと量
- トライアルの期間と、その間に困ったときの連絡先
- 譲渡のときにかかる費用と、その内訳
迎える日までにそろえるもの
- サークルやクレート(落ち着いて休める場所)
- 首輪・ハーネス・リード(体に合った抜けにくいもの)、迷子札
- トイレトレー・ペットシーツ
- 今食べているものと同じフード、食器・水入れ
- 移動用のキャリー(体の大きさに合うもの)
保護犬は、新しい環境に慣れるまで時間がかかる子もいます。最初のうちは、玄関や窓からの飛び出し(脱走)に特に気をつけましょう。散歩では首輪とハーネスの両方にリードをつけるなど、抜けない工夫をしている飼い主さんもいます。道具の選び方はハーネスと首輪どっちがいい?、もしものときは犬が迷子になったらすぐやることを先に読んでおくと安心です。
迎えたあとの手続き:30日以内にやること
市区町村での犬の登録
厚生労働省によると、生後91日以上の犬の飼い主は、犬を飼い始めてから30日以内に市区町村で犬の登録をし、毎年狂犬病の予防注射を受けさせ、鑑札と注射済票を犬につけることになっています。すでに登録されている犬を譲り受けたときの手続きは、住んでいる市区町村で確かめましょう。
マイクロチップの変更登録
環境省によると、すでにマイクロチップの入っている犬を譲り受けたときは、新しい飼い主の情報を登録する変更登録が必要です。
| 項目 | 内容(環境省・名古屋市の案内より) |
|---|---|
| 期限 | 譲り受けてから30日以内(名古屋市の案内) |
| 手数料 | オンライン400円、紙1,400円 |
| 必要なもの | 前の飼い主から犬といっしょに渡される登録証明書 |
マイクロチップが入っていない犬を譲り受けた場合、装着は義務ではなく努力義務です。装着したときは登録が必要になります。
早めに動物病院へ
迎えたら、早めに動物病院で体の様子を見てもらう飼い主さんが多いです。譲渡は週末になることも多いので、近くの病院が日曜に開いているかを前もって確かめておきましょう。犬ふぁんで診療時間がわかる動物病院693院では、日曜に診療しているのは74.0%で、4院に1院は日曜が休みでした。探し方は日曜・祝日に開いている動物病院の探し方、かかりつけの決め方は動物病院の選び方にあります。体調で気になることがあるときは、自分で判断せず動物病院に相談してください。
迎えたあとに頼れる場所
保護犬は、それまでの経験によって、人の手や物音をこわがるなど、苦手なものを持っていることがあります。新しい家に慣れるまでは、あせらず、犬が自分から近づいてくるのを待つくらいの気持ちで過ごしましょう。
- 体のこと:動物病院で、健康チェックやワクチンの相談を
- 吠え・こわがり・トイレの悩み:しつけ教室やドッグトレーナーに相談。個別レッスンなら、その子の性格に合わせて進めてもらいやすくなります。選び方はしつけ教室の選び方へ
- 困ったこと全般:譲り受けた自治体や団体に相談できることもあります。柏市のように、譲渡後の訪問で様子を見る自治体もあります
- 留守番や旅行:慣れるまでは、長い留守番や遠出は控えめに。預け先は早めに探しておきます
よくある質問
Q譲渡会に行ったら、その日に連れて帰れますか?
多くの場合、申し込み・面談・トライアルなどの手順があり、その日には連れて帰れません。大阪府も、マッチングの日には原則として譲渡しないとしています。
Q保護犬を迎えるのに費用はかかりますか?
保護団体では、ワクチンや医療にかかった費用の一部などを譲渡のときに求めることがあります。金額や内訳は団体ごとに違うので、申し込む前に確かめてください。迎えたあとも、えさ代やワクチン代、治療費などがかかります。
Q一人暮らしや高齢でも迎えられますか?
条件は自治体や団体によって違います。柏市では、65歳以上の人や一人暮らしの人は、飼うことに協力してくれる人の同意が必要としています。案内を確かめ、相談してみましょう。
Q賃貸住宅でも保護犬を迎えられますか?
犬を飼ってよい住まいであることが前提です。大阪府では、借家や集合住宅の場合、飼ってよいとわかる規約などのコピーを出す必要があるとしています。
Q講習会は必ず受けるのですか?
大阪府や神奈川県のように、自治体から譲り受けるときに講習会を条件にしているところがあります。神奈川県はオンラインで受けられ、受講証は視聴日から3年間有効です。
Q迎えたあとにする手続きは?
市区町村での犬の登録(飼い始めてから30日以内)と、マイクロチップが入っている犬の変更登録(名古屋市の案内では30日以内。オンライン400円、紙1,400円)です。毎年の狂犬病の予防注射も必要です。
参考にした情報
- 環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html
- 大阪府動物愛護管理センター「犬を譲り受けるまでの流れ」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/1447/nagareinu.pdf
- 神奈川県動物愛護センター「オンラインによる譲渡前講習会の受講について」 https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/1594/awc/receive/workshop.html
- 柏市「動物愛護ふれあいセンターに収容されている犬・ねこの譲渡を希望される方へ」 https://www.city.kashiwa.lg.jp/dobutsuaigo/shiseijoho/shisei/health_hospital/mainmenu/dobutsu/hogo/joto.html
- 香川県「新しい飼い主探しのあれこれ」(新しい飼い主の見極めチェックポイント) https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/16472/sd0lz1200806152753_f02.pdf
- 環境省「マイクロチップ Q&A」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip_qa.html
- 名古屋市「マイクロチップの装着・登録の義務化」 https://www.city.nagoya.jp/kurashi/pet/1015199/1034042/1015204.html
- 厚生労働省「狂犬病予防法に基づく犬の登録・予防注射について」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/07.html
- 犬ふぁん 施設データの集計(動物病院4,670院のうち、曜日ごとの診療時間がわかる693院。2026年10月10日時点)
(いずれも2026年10月に確認)
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