まず結論:社会化期は「いろいろなものに、いい気分で、少しずつ」
社会化とは、人やほかの動物、場所や音など、これから出会うものにうまく慣らしていくことです(広島県動物愛護センターの説明)。子犬が新しいものを受け入れやすい社会化期は、生後3週ごろから12〜16週ごろまでといわれます(香川県の資料は生後3〜12週齢、広島県動物愛護センターは生後3〜16週)。
- ショップやブリーダーから迎えた子犬は、残りが1〜2か月ほど。 生後8週で迎えたら、12週までと考えて約4週間、16週までと考えて約8週間です
- やることは5つの分野。 人・音・さわられること・場所と乗り物・ほかの動物。下のリストを1日1つずつ進めれば十分です
- 「たくさん」より「いい気分で」。 遠くから・小さな音から・短く、おやつと一緒に。怖がったらすぐ離れます
- 散歩デビュー前でも、できることは多い。 抱っこやキャリーで外の景色と音を見せる、家に人を招く、車に乗る
- ほかの犬と会うのは、管理された場で。 公営ドッグランは狂犬病予防注射の証明が要るところが多く、社会化期のうちは使いにくいので、パピー教室や落ち着いた成犬との短いあいさつを使います
次にすることは、この記事の経験リストを家族で分担し、今日できる1つ(たとえば「耳と足先を2〜3秒さわって、ほめる」)から始めることです。
うちの子の残りはどのくらい?
ブリーダーやペットショップは、生後56日(8週)をすぎるまで、販売のために子犬を引き渡せません(環境省)。この時期に親やきょうだいと過ごすことで、吠える・咬むなどの加減を身につけると説明されています。家に来てからは、飼い主がそのバトンを受け取ります。
| 迎えた時期 | 12週までとした場合の残り | 16週までとした場合の残り |
|---|---|---|
| 生後8週 | 約4週間 | 約8週間 |
| 生後10週 | 約2週間 | 約6週間 |
| 生後12週 | ほぼ終わり | 約4週間 |
残りが短いからといって、迎えた日から詰めこむ必要はありません。最初の数日は、寝床・トイレ・ごはんのリズムづくりが先です。そのあと、毎日少しずつ始めます。
迎えてからの1か月の進め方(目安)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 最初の数日 | 家に慣れる。家族の声や生活の音が、最初の「慣れる練習」 |
| 1週目の後半 | 体を短くさわる、家の中の音に少しずつ慣らす |
| 2週目 | 抱っこで玄関先や家の前へ。インターホンが鳴って人が入ってくる流れを練習 |
| 3〜4週目 | 抱っこやキャリーで近所へ。車に乗る。動物病院やパピー教室で人や犬に会う |
ワクチンの予定や外に出る時期は、かかりつけの動物病院と相談して決めてください。子犬の様子を見て、ゆっくりにしてかまいません。
子犬の経験リスト
1つの経験を、場所や人を変えて何度かくり返すのがコツです。「最初の一歩」が平気になったら「できたらOK」へ進みます。できた日をカレンダーに書いておくと、家族で共有できます。
人
| 経験すること | 最初の一歩 | できたらOK |
|---|---|---|
| 子ども・お年寄り | 遠くから見る、声を聞く | 落ち着いた子どもが床に置いたおやつを食べられる |
| 帽子・めがね・マスクの人 | 家族が帽子やマスクをつけて、おやつを渡す | 知らない人の帽子やマスクを見ても平気 |
| 走る人・自転車・カート | 抱っこで道ばたから遠くに見る | 近くを通っても、こちらを見ておやつを食べられる |
| 家に来る人 | インターホンの音を小さく鳴らして、おやつ | 来客が入ってきても、少し離れて落ち着いていられる |
音
| 経験すること | 最初の一歩 | できたらOK |
|---|---|---|
| 掃除機・ドライヤー | 止めたまま置いておき、においをかいだらおやつ | 同じ部屋で使っていても気にしない |
| 洗濯機・食器の音・インターホン | 別の部屋で鳴っている間に、おやつ | 鳴っても、こちらを見る程度ですむ |
| 車・バイク・電車・工事の音 | 窓辺やベランダで小さく聞く | 抱っこで道ばたにいても落ち着いている |
| 雷・雨・花火 | 動画や音源を、ごく小さな音で | 少し大きな音でも遊びやごはんを続けられる |
さわられること
| 経験すること | 最初の一歩 | できたらOK |
|---|---|---|
| 耳・口のまわり・足先・しっぽ | 2〜3秒さわって、ほめる | 耳の中や口の中をのぞいても平気 |
| ブラッシング・歯みがき | 道具を見せて、においをかがせる | 短い時間、ブラシや歯ブラシを当てられる |
| 爪切り | 爪切りを足に当てるだけ | 足をにぎって爪を見ても平気 |
| 抱っこ・台に乗る | すべらないマットを敷いたテーブルの上でおやつ | 台の上で体をさわられても落ち着いている |
| 足をふく | タオルで足先にふれる | 散歩のあとのように4本の足をふける |
場所と乗り物
| 経験すること | 最初の一歩 | できたらOK |
|---|---|---|
| 家の外 | 抱っこで玄関先に出る | 抱っこやキャリーで近所の道・公園の入口へ行ける |
| クレート・キャリー | 中におやつを置き、自分から入ったらほめる | 扉を閉めて数分すごせる |
| 車 | エンジンを止めた車の中で、キャリーに入っておやつ | 家のまわりを数分走って帰ってこられる |
| 動物病院・サロン | 診察のない日に、あいさつだけできるか相談 | 待合室で抱っこやキャリーのまま落ち着いている |
| 足もとの感触 | 家の中でマット・タオル・段ボールの上を歩く | 芝生・砂利・すべりやすい床でも歩ける |
ほかの動物
| 経験すること | 最初の一歩 | できたらOK |
|---|---|---|
| 落ち着いた成犬 | 抱っこで遠くから見る | 飼い主どうしが見ている前で、短くあいさつできる |
| 同じくらいの子犬 | パピー教室など、管理された場で | 遊んだあと、呼ぶと飼い主のほうに戻れる |
| 猫・鳥など | 遠くから見る | 見ても追いかけようとしない |
何のための経験か
東京都の講習会資料「社会化のススメ」では、家庭犬に必要なしつけとして、足をふかせる、歯みがきができる、ブラッシングできる、おとなしく抱っこされる、クレートで待てる、ほかの犬とすれ違える、などを挙げています。上のリストは、大人になってからのこうした「できること」の土台づくりです。
進め方のコツと、怖がっているサイン
- 距離をとって始める:遠くから見る・小さな音で聞く。平気なら少しずつ近づける
- おやつとセットにする:新しいものが見えたら、おやつ。「いいことが起きる」と覚えてもらう
- 短く終える:1回は数分。楽しいうちに終える
- 1回に1段階:前の段階が平気になってから、次へ進む
- 怖がったら離れる:無理に近づけない、続けない
怖がっているサイン
- しっぽを巻く、体を低くする
- 逃げようとする、飼い主の後ろに隠れる
- 固まって動かない、おやつを食べなくなる
こうしたサインが出たら、すぐに距離をとって落ち着かせ、おやつを食べられたらそこで終わりにします。次は、もっと遠く・もっと短い時間から始めます。
やりがちな失敗
- 一度にたくさん詰めこむ:週末にまとめて公園・お店・友人宅を回ると、子犬は疲れて、どれも怖い記憶になりやすくなります
- 知らない人に次々と抱っこしてもらう:人に慣らすときは、人がおやつを床に置く、くらいから
- 怖がっているのに「慣れるまで」続ける:苦手を強めてしまうことがあります
- 家族ごとにやり方が違う:ほめる言葉やおやつの渡し方をそろえる
- 子どもだけで練習させる:子どもが追いかけたり急に抱き上げたりしないよう、大人がそばで見ている時間に
1週間の組み方の例
家族で「音の担当」「体をさわる担当」「お出かけの担当」と分けると、1人の負担が小さくなります。
| 曜日の例 | テーマ | やること |
|---|---|---|
| 月 | 音 | 掃除機を遠くで短く動かす。おやつを1粒 |
| 火 | 体 | 耳と足先を2〜3秒さわって、ほめる |
| 水 | 場所 | 抱っこで玄関先に出て、外の音を聞く |
| 木 | 人 | 帽子やマスクをつけた家族が、おやつを渡す |
| 金 | 乗り物 | クレートに入っておやつ。車に乗るだけで降りる |
| 土 | 人・場所 | 抱っこで近所を歩き、子どもの声や自転車を遠くから見る |
| 日 | おさらい | 楽しくできたことをもう一度。新しいことはしない |
疲れている日や、体調がいつもと違う日は休みます。
例:車に慣らす4段階
- エンジンを止めた車の中で、クレートやキャリーに入っておやつを食べる
- エンジンをかけて、動かずに数分すごす
- 家のまわりを数分だけ走って、帰ってくる
- 少しずつ距離をのばす。落ち着かない様子があれば、前の段階に戻る
車酔いが心配なとき、遠出の前の準備ははじめての犬連れドライブにまとめています。キャリーの慣らし方はキャリーに慣らす方法にあります。
散歩デビュー前と、ほかの犬に会う場所
地面を歩かせる散歩をいつから始めるかは、ワクチンの予定と合わせて動物病院と相談します。その間も、社会化はできます。
- 抱っこやキャリーで外に出て、景色や音、人の行き来を見せる
- ベランダや窓辺で、外の音を聞かせる
- 家に人を招いて、あいさつの練習をする
- 家の中で、いろいろな床の上を歩かせる
ほかの犬には、パピー教室で会う
ほかの子犬や家族以外の人に安全に会える場として、パピー教室(子犬のしつけ教室)があります。広島県動物愛護センターのパピーパーティでは、診察台や傘、カラーコーンなど、日常で出会うものにおやつを使って慣らす様子を紹介しています。参加の条件(月齢やワクチン)は教室ごとに違うので、申し込む前に確かめます。いつから行けるか、教室の探し方はパピー教室はいつから?にまとめています。
公営のドッグランは、狂犬病予防注射の証明を求めるところが多く(生後91日以上の犬が年1回受けるもの)、入れるようになる頃には社会化期は終わりかけています。ドッグランは、社会化期のあとの「次のステップ」と考えます(はじめてのドッグラン)。
社会化と一緒に始めたいこと
- 甘噛み:家に来た日から、噛む先を手からおもちゃに移す(甘噛みのしつけ)
- 留守番:同じ家の中で少し離れることから(子犬の留守番は何時間まで?)
- トリミング:サロンで落ち着けるよう、体をさわる練習を続けておく(はじめてのトリミング)
社会化期をすぎても、あきらめなくていい
東京都の講習会資料でも、子犬のときに社会化が足りなかった成犬も、あきらめず少しずつ慣らしを、と呼びかけています。社会化期は「慣れやすい時期」であって、すぎたら何もできないわけではありません。
- 苦手なものが見つかったら、もう一度「遠くから・短く・おやつと一緒に」で始める
- 時間がかかる前提で、急がない
- 困ったときは、しつけ教室やドッグトレーナーに相談する
吠える・咬むなどで困ったときや、体調が関係していそうなときは、動物病院にも相談しましょう。
よくある質問
Q社会化期はいつまでですか?
生後3週ごろから12〜16週ごろまでといわれ、資料によって幅があります(香川県の資料は3〜12週齢、広島県動物愛護センターは3〜16週)。生後8週で迎えた子犬なら、残りは1〜2か月ほどです。
Q社会化期をすぎてしまいました。もう遅いですか?
遅くはありません。すぎてからも慣らす練習はできます。時間がかかることがあるので、距離をとって少しずつ進めます。
Qワクチンが終わる前に外に出してもいいですか?
地面を歩かせるかどうかは、かかりつけの動物病院と相談してください。抱っこやキャリーで外の景色や音を見せることから始める方法があります。
Qどのくらいの頻度で練習すればいいですか?
毎日少しずつ。1回は数分で十分です。1日1テーマにして、子犬が楽しそうなうちに終えます。
Q怖がって固まってしまいました。
すぐに距離をとり、落ち着いておやつを食べられたら、そこで終わりにします。次は、もっと遠く、もっと短い時間から始めます。
参考にした情報
- 広島県動物愛護センター「動物愛護センターの日常1(子犬の社会化,桜と現実,モデル犬紹介)」(社会化の説明、社会化期は生後3〜16週)
- 広島県動物愛護センター「動物愛護センターの日常44(パピーパーティ・社会化編)」(パピーパーティの内容)
- 香川県「新しい飼い主探しのあれこれ」(PDF)(犬の社会化期は生後3〜12週齢)
- 東京都保健医療局 講習会資料「社会化のススメ」(PDF)(家庭犬に必要なしつけ、成犬も少しずつ慣らす)
- 環境省「STOP!生後56日までの犬猫販売!」
- 厚生労働省「狂犬病に関するQ&Aについて」(生後91日以上の犬の予防注射)
(いずれも2026年10月に確認)
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