まず結論:子犬と飼い主がいっしょに通う「慣れる練習」と「しつけの基本」の場
パピー教室(子犬のしつけ教室)は、子犬と飼い主がいっしょに参加して、人やほかの犬、いろいろな音や場所に慣れる練習と、くらしの基本のしつけを学ぶ場です。犬を預けてプロに訓練してもらう「預かり訓練」とは違い、飼い主が家で続けられるやり方を教わるのが中心です。
- 何をする?:ほかの子犬や人とのあいさつ、体を触られる練習、「おすわり」「おいで」などの合図、トイレや甘がみの相談
- いつから?:ワクチンの接種と、教室が決めている参加条件しだい。自治体の教室では「生後6か月まで」「1歳未満」などの決まりがある
- どこで?:しつけ教室、動物病院、ペットショップ、トリミングサロン、自治体の動物愛護センターなどが開いている
- 料金は?:教室によってまったく違う。自治体の教室には無料のものもある
- 選び方:少人数か、ほめて教えるやり方か、見学できるか、参加条件がはっきりしているか
この記事では、パピー教室で何をするのか、いつから行けるのか、自治体の教室の実例、教室の選び方、家で続けるコツ、そして教室を卒業したあとのドッグランデビューまでを順番にまとめます。
なぜ子犬のうちに通うのか
「社会化期」という大事な時期
環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」では、犬には生後3〜12週齢の「社会化期」があり、この時期に親やきょうだいと過ごし、人間やほかの動物、さまざまな環境を経験することが、社会性(相手や状況に合った行動をとる力)を身につけるために大切だとしています。
子犬の時期は、新しいものを受け入れやすい時期です。パピー教室では、
- 家族以外の人に、やさしく触られる
- ほかの子犬と、無理のない範囲であいさつする
- 知らない場所や音を、こわくない体験として知る
といった経験を、トレーナーが見守る安全な環境で積めます。飼い主にとっては、犬の気持ちの読み取り方や、ほめるタイミングを教わる機会にもなります。
家に来るのは生後8週を過ぎてから
いまは、犬や猫を売る業者が、生まれてから56日(8週)を過ぎていない子犬・子猫を販売したり、販売のために引き渡したりすることは、動物愛護管理法で禁止されています。埼玉県は、幼い子犬を早くに母犬から離すと、成長してからかみ癖や吠えなどの行動につながりやすいと報告されている、と説明しています。
ペットショップやブリーダーから迎えた子犬は、生後8週を過ぎてから家に来ます。社会化期の残りの時間は長くありません。だからこそ、家に来てからの数か月で、いろいろな経験をこわくない形で積ませてあげることが大切です。
「おいで」「まて」は安全のため
環境省のガイドラインでは、万一に備えて「オイデ」など呼び戻しができるようにしつけておくことが大切だとしています。また、むだ吠えの防止、甘がみのコントロール、「オイデ」「マテ」といった基本的なしつけをすることもすすめています。リードが外れてしまったときや、ドッグランで遊ぶときに、呼べば戻ってくることは犬の安全につながります。
パピー教室でやること
教室によって内容は違いますが、よくあるのは次のような内容です。
| 内容 | 目的 |
|---|---|
| ほかの子犬とのあいさつ・遊び | 犬どうしの付き合い方に慣れる |
| 人に触られる練習 | 足先・耳・口まわりを触られても平気になる(動物病院やトリミングで役立つ) |
| 基本の合図 | 「おすわり」「ふせ」「まて」「おいで」 |
| 音や物に慣れる | 掃除機・ドライヤー・車の音、いろいろな床の感触など |
| 首輪・リード・ハーネス | つけることに慣れる、引っぱらずに歩く練習 |
| 飼い主の相談 | トイレ、甘がみ、留守番、吠えなどの困りごと |
1回の流れの例
教室によって違いますが、1回1〜2時間ほどで、次のように進むことが多いです。
- 受付(ワクチンの証明書などの確認)
- トレーナーからその日のテーマの説明
- 子犬を落ち着かせる練習、合図の練習
- ほかの子犬や人とのあいさつ(様子を見ながら少しずつ)
- 飼い主からの質問・相談の時間
実際に、長野県動物愛護センターのパピー教室は1回2時間(13時30分〜15時30分)、名古屋市動物愛護センターのパピー教室は1回1時間30分(13時30分〜15時)です(いずれも公式ページより)。
「預かり訓練」との違い
| パピー教室 | 預かり訓練 | |
|---|---|---|
| だれが練習する? | 飼い主と子犬がいっしょに | トレーナーが犬を預かって |
| どこで? | 教室・会場(家で続ける) | 訓練所など |
| 向いていること | 慣れる経験を積む、飼い主がやり方を覚える | 特定の課題をプロに集中して見てもらう |
| 注意点 | 家で続けないと身につきにくい | 家に戻ってからのやり方を教わる必要がある |
子犬の時期は、飼い主と犬がいっしょに経験を積むことに意味があります。まずはパピー教室で「飼い主が教え方を覚える」ことから始めるのが一般的です。
いつから参加できる? 自治体の教室の実例
参加できる時期は、ワクチンの接種と、教室が決めた参加条件で決まります。民間の教室か、自治体の教室かによっても違います。
自治体のパピー教室の条件(公式ページより)
自治体の動物愛護センターなどが、無料のパピー教室を開いていることがあります。2026年度の2つの例を、公式ページの内容を要約して並べます。
| 項目 | 名古屋市動物愛護センター | 長野県動物愛護センター(ハローアニマル) |
|---|---|---|
| 対象の月齢 | 生後6か月までの子犬 | 1歳未満 |
| 必要なこと | 犬の登録、2026年度の狂犬病予防注射、混合ワクチン接種済み | 狂犬病予防注射と登録済み、混合ワクチン(3種以上)接種済み、寄生虫の駆除済み |
| 定員 | 10組(多い場合は抽選) | 8組まで |
| 費用 | 無料 | 無料 |
| 開く日 | 年8回の日曜 | 毎月第3日曜 |
名古屋市は名古屋市内に住んでいる人が対象で、往復はがきか電子申請で、開催日の2週間前までに申し込むしくみです。長野県の教室は、ほめてトレーニングする方法や、日常生活に必要な基本的なトレーニングを内容にしていて、持ち物としてリード、首輪、トレーニング用のおやつ・フード、水飲みの容器、うんち袋などを挙げています。長野県では、これから犬を飼う人や飼い始めた人向けの「犬の飼い方教室(学科)」も別に開いています。
「狂犬病予防注射済み」が条件の教室は、生後3か月以降
厚生労働省によると、生後91日以上の犬の飼い主は、犬を飼い始めてから30日以内に市町村で犬の登録をし、狂犬病の予防注射を受けさせる必要があります。
上の2つの自治体の教室のように「登録と狂犬病の予防注射が済んでいること」が条件なら、少なくとも生後3か月を過ぎてからの参加になります。民間の教室では、もっと早い時期から受け入れているところもあります。条件は教室ごとにまったく違うので、申し込む前に確かめましょう。
確かめる順番
- 動物病院に聞く:ワクチンの接種が何回目まで済んでいるか、いつからほかの犬と会ってよいか
- 教室に聞く:月齢・ワクチンの条件、証明書が必要か、体調の悪い日の扱い
- 書類をそろえる:ワクチンの接種証明書、狂犬病予防注射済票、鑑札など。なくさず持っておく(スマホで写真をとっておくと便利)
子犬の時期は、体調の変化にも気をつけたい時期です。いつもと様子が違う日は無理に参加せず、教室に連絡しましょう。気になることがあれば、動物病院に相談してください。
パピー教室の選び方と、家で続けるコツ
見ておきたいポイント
- 教え方:叱ったり、強く引っぱったりせず、できたことをほめて教えるか
- 人数:子犬の数が多すぎないか。1頭ずつ目が届く人数か(自治体の例では8〜10組)
- 子犬の組み合わせ:体の大きさや性格に合わせて、遊ばせ方を変えているか
- 参加条件:月齢・ワクチン・証明書の条件がはっきりしているか
- 見学:申し込みの前に見学できるか
- 続けやすさ:家から通える場所か、日程は合うか、回数と料金の決まり
- 相談のしやすさ:トイレや甘がみなど、家での困りごとを聞いてもらえるか
料金や回数は教室によって大きく違います。「全◯回で◯円」「1回ごと」「無料(自治体)」など、決まり方も含めて比べましょう。
開いている場所ごとの特徴
| 開いているところ | 特徴 |
|---|---|
| しつけ教室 | 合図の練習や困りごとの相談に時間をかけることが多い |
| 動物病院 | 病院に来ること、体を触られることに慣れる内容を入れていることがある |
| ペットショップ・サロン | 買い物やトリミングのついでに通いやすい |
| 自治体の動物愛護センター | 無料のことがある。住んでいる地域の決まりや開催日が限られる |
内容は教室ごとに違うので、見学や説明で確かめてください。
動物取扱業の登録
犬を預かって訓練する教室や、自宅に来てくれる出張訓練の業者は、動物愛護管理法の「第一種動物取扱業(訓練)」の登録が必要です。環境省は、訓練業の例として「動物の訓練・調教業者」「出張訓練業者」を挙げ、標識の掲示を守るべき決まりの1つにしています。預かりや出張もある教室なら、登録番号の表示があるかを見ておきましょう。
近くのしつけ教室は、犬ふぁんの一覧で探せます。
家で続けるコツ
パピー教室の効果は、家でどれだけ続けられるかで大きく変わります。
- 1回は短く:子犬の集中は長く続きません。数分ずつ、1日に何回か
- できたらすぐほめる:ほめ言葉やおやつは、できた瞬間に
- 家族でやり方をそろえる:合図の言葉や、だめなときの対応を家族で同じにする
- いろいろな経験を少しずつ:抱っこで外を歩く、来客に会う、車に乗るなど、こわがらない範囲で
- こわがったら距離をとる:近づけすぎず、離れたところから見るだけでもよい
家でできる「慣れる練習」のリスト
- 足先・耳・口まわりを、短い時間やさしく触る(できたらほめる)
- ブラシやタオルを見せる、軽く当てる
- 首輪やハーネスをつけて、少しの時間過ごす
- 掃除機やドライヤーの音を、離れたところで短く聞かせる
- キャリーやクレートの中でおやつを食べる
- 玄関のチャイムや、外の車の音に慣れる
- 家族以外の人に、おやつをもらう
教室で習ったことを散歩やおでかけで試していくと、ドッグカフェやドッグランにも落ち着いて行けるようになります。
犬ふぁんのデータで見る「教室のあと」:ドッグランの利用条件
パピー教室を卒業したあと、多くの飼い主さんが次に考えるのがドッグランです。犬ふぁんでは、公式ページで利用ルールまで確かめたドッグラン223か所(主に自治体・公園の公営ドッグラン)の決まりを集計しています(2026年10月10日時点)。民間のドッグランは少ないので、全体を代表する数字ではありませんが、パピー教室で身につけたいことと深くつながっています。
登録やワクチンの証明が必要なところが多い
登録の決まりがわかった207か所のうち、次のものを求めていたのは以下の割合でした(同じドッグランが複数を求めることがあります)。
- 狂犬病予防注射の証明80.2%166
- 登録制・会員制75.8%157
- 鑑札35.3%73
- 年度ごとの更新28.0%58
- 混合ワクチンの証明22.7%47
- 講習会・説明会への参加2.4%5
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8割のドッグランが狂犬病予防注射の証明を求めていました。パピー教室に申し込むときにそろえた証明書は、ドッグランデビューでもそのまま必要になります。
数は少ないですが、利用の前に講習会や説明会への参加を求めるところもあります(207か所中5か所)。たとえば、横浜市中区の本牧山頂公園ドッグランは、年1回の会員登録制で、初回にプチレッスンの受講が必要としています(公式ページより)。
「しつけができていない犬」は入れないところも
入れない犬の決まりを書いていたドッグラン23か所のうち、「攻撃的・かみ癖のある犬」を入れないとしていたのは82.6%、「しつけができていない・飼い主が制御できない犬」を入れないとしていたのは52.2%でした(n=23と少ないので、目安として見てください)。
ドッグランでは、呼べば戻る「おいで」や、興奮したときに落ち着かせることが、ほかの犬との事故を防ぐうえで大切です。パピー教室で練習する内容は、そのままドッグランのルールを守る力になります。
子犬向けの決まりは公式ページで確かめる
今回確かめた範囲では、「子犬は何か月から」と月齢で決めていたドッグランは見当たりませんでした。ただ、ワクチンの証明を求めるところが多いので、実際には接種が終わってからの利用になります。小さな子犬は、小型犬用のエリアがあるドッグランから始めると安心です。
よくある質問
Qパピー教室は何か月まで参加できますか?
教室ごとに決まりがあります。自治体の例では、名古屋市が「生後6か月まで」、長野県が「1歳未満」でした。対象の月齢を過ぎたら、成犬向けのクラスや個別レッスンに進める教室もあるので、申し込みのときに確かめましょう。
Qパピー教室の料金はどのくらいですか?
教室によってまったく違います。自治体の動物愛護センターの教室には、名古屋市や長野県のように無料のものもあります。民間の教室は回数や内容で料金が違うので、見学のときに確かめてください。
Q預かり訓練とどちらがいいですか?
パピー教室は、飼い主がやり方を学んで家で続けるのが目的です。預かり訓練は、プロが一定期間犬を預かって訓練します。子犬の時期に飼い主もいっしょに経験を積みたいなら、パピー教室が向いています。
Q人見知り・犬見知りの子でも大丈夫ですか?
こわがりの子こそ、無理のない形で慣れる練習が役に立ちます。申し込みのときに性格を伝え、離れたところから見ることから始めるなど、ペースを合わせてもらえるか相談しましょう。
Qワクチンがまだ終わっていなくても参加できますか?
教室によって違います。自治体の教室では、登録・狂犬病の予防注射・混合ワクチンが済んでいることを条件にしている例がありました。いつからほかの犬と会ってよいかは、ワクチンを打ってもらった動物病院に確かめてください。
Q動物病院の教室と、しつけ教室のパピークラスの違いは?
動物病院の教室は、病院に来ること・体を触られることに慣れる内容を入れていることがあります。しつけ教室は、合図の練習や困りごとの相談に時間をかけることがあります。内容は教室ごとに違うので、見学や説明で確かめてください。
参考にした情報
- 環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」PDF https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2202.pdf
- 環境省「第一種動物取扱業者の規制」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/trader.html
- 埼玉県「生後56日齢以下の犬猫の販売等は禁止されています」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0706/doubutu/inuneko-hanbai.html
- 厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/07.html
- 名古屋市「パピー(子犬)教室」 https://www.city.nagoya.jp/kurashi/pet/1015473/1015495/1035065/1017797.html
- 長野県動物愛護センター(ハローアニマル)「犬の飼い方教室のご案内」 https://www.pref.nagano.lg.jp/dobutsuaigo/kaikata/inukyoushitsu.html
- 犬ふぁん 施設データの集計(ドッグランの利用ルール、2026年10月10日時点)
(いずれも2026年10月に確認)
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