まず結論:同行避難は「一緒に逃げること」。避難所で同じ部屋とは限らない
同行避難(どうこうひなん)とは、災害のときに、犬と一緒に安全な場所まで逃げることです。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」では、次のように整理されています。
- 同行避難は、ペットと一緒に移動して避難する行動のこと
- 避難所で、人とペットが同じ部屋で過ごせることを意味するものではない
- 避難所でペットをどう過ごさせるかは、避難所ごとに違う
つまり「同行避難できる=避難所で犬といつも一緒にいられる」ではありません。たとえば横浜市のガイドラインでは、ペットは人の避難場所とは分けた「一時飼育場所」で、ケージに入れて飼い主が世話をする形が示されています。
この記事で押さえてほしいことは、次の4つです。
- 持ち出し袋は犬の分も用意する:フードと水は少なくとも5日分(できれば7日分以上)が目安
- 避難所のルールは事前に調べる:受け入れの有無、ペットを置く場所、世話のしかたは自治体・避難所ごとに違う
- 避難所以外の過ごし方と預け先も決めておく:自宅、車、親戚・知人、施設
- キャリーやケージに慣らしておく:避難所ではケージで過ごすことが多い
「同行避難」と「同伴避難」のちがい
ニュースや自治体の案内では、似た言葉がいくつか出てきます。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 同行避難 | ペットと一緒に安全な場所まで避難する「行動」 |
| 同伴避難 | 避難所でペットを飼養管理している「状態」(同じ部屋とは限らない) |
| 同室避難(横浜市の例) | 専用テントなどを設け、飼い主とペットがともに過ごすこと |
環境省のガイドラインでは、同伴避難も「同じ部屋で過ごす」という意味ではないとされています。横浜市は、特別な事情でペットと一緒に過ごす必要がある人のために、動物愛護センターなどで「同室避難場所」を整える取り組みを進めていると案内しています。
言葉より大事なのは、住んでいる地域の避難所で、犬がどこで、どう過ごすことになっているかです。これは次の章のとおり、前もって調べておくしかありません。
持ち出すもの:優先順位つきリスト
環境省の一般飼い主向けガイドラインには、ペット用の備蓄品と、持ち出すときの優先順位の例が載っています。犬に関係するものをまとめました。
優先順位1:犬の命や健康に関わるもの
| 持ち出すもの | ポイント |
|---|---|
| 療法食・薬 | 飲んでいる薬や、決まったフードがある場合。手に入りにくいので最優先 |
| ドッグフードと水 | 少なくとも5日分、できれば7日分以上 |
| キャリーバッグやケージ | 避難所ではケージで過ごすことが多い |
| 予備の首輪とリード | 伸びないもの |
| ペットシーツ | トイレ用。敷物にも使える |
| 排泄物の処理用具 | うんち袋、消臭できる袋など |
| 食器 | 折りたためるものが軽い |
優先順位2:情報
- 飼い主の連絡先と、飼い主以外の緊急連絡先・預け先の情報
- 犬の写真(印刷したものと、スマホの画像の両方)
- ワクチンの接種状況、これまでの病気、飲んでいる薬、検査の結果、かかりつけの動物病院などの情報
横浜市のガイドラインでは、こうした情報をまとめたものを「ペット手帳」と呼んで、持ち出し袋に入れるよう案内しています。はぐれたときに犬を探す手がかりにも、避難先で預ける・受け付けてもらうときの説明にも使えます。
優先順位3:ペット用品
- タオル、ブラシ
- ウェットタオルや清浄綿(目や耳のまわりの汚れにも使える)
- ビニール袋(排泄物の処理など、いろいろ使える)
- お気に入りのおもちゃなど、においのついたもの
- ガムテープやマジック(ケージの補修や、犬の情報を書いて貼るのに使える)
5日分を「すぐ持ち出す分」と「家の備蓄」に分ける
5日分以上のフードと水を、全部背負って逃げるのは大変です。横浜市のガイドラインでは、避難場所(地域防災拠点)にはフードやケージなどペット用品の備蓄はなく、支援物資が届くまでにはかなりの日数がかかるとしています。
そこで、次のように分けておくと現実的です。
- 持ち出し袋:数日分のフードと水、薬、情報、トイレ用品。玄関の近くに置く
- 家の備蓄:残りのフードと水。自宅に戻れるときや、在宅で過ごすときに使う
ふだん食べているフードを少し多めに買い、古いものから使って、減った分を買い足す「ローリングストック」にすると、期限切れを防げます(横浜市のガイドラインでも勧めています)。
迷子にさせないための「身元の表示」
災害のときは、犬がパニックになってはぐれることがあります。身元がわかるものを、ふだんからつけておきましょう。
- 首輪と迷子札(携帯電話の番号など)
- 鑑札と狂犬病予防注射済票(犬につけることは、災害かどうかにかかわらず狂犬病予防法で飼い主の義務)
- マイクロチップ(入っている犬は、登録の情報が今の住所・電話番号になっているか確かめる)
マイクロチップは、2022年6月1日から、ペットショップやブリーダーで売られる犬への装着が義務になりました。所有者や住所が変わったときは、環境省の登録システムで変更の手続きが必要です。
避難所のルールと、避難所以外の選択肢
避難所では「飼い主が世話をする」が基本
環境省のガイドラインでは、避難所でペットを飼う場合は「各避難所が定めたルールに従い、飼い主が責任を持って世話をする」こととされています。横浜市の例では、次のような形が示されています。
- ペットは、人の生活する場所と分けた「一時飼育場所」で、ケージに入れて過ごす
- ケージに入れない犬は、鉄棒などにつなぐ
- 一時飼育場所の開設や運営は、同行避難してきた飼い主同士(「飼い主の会」)が中心になって行う
- 受付で、ペットの情報を書いたカードを記入する
- 飼い主以外の人が一時飼育場所に入らないよう、周りに知らせる
ごはん、トイレの片づけ、散歩、においや鳴き声、抜け毛への気配りは、すべて飼い主の役目です。避難所には動物が苦手な人やアレルギーのある人もいます。
受け入れの有無は、地域ごとに調べる
ペットを受け入れる避難所かどうか、どこに犬を置くか、どんなルールがあるかは、自治体や避難所ごとに違います。横浜市でも「一時飼育場所の設定や運営のルールは拠点ごとに異なる」としています。
住んでいる市区町村のホームページや防災マップ、防災の窓口で、次のことを確かめておきましょう。
- 近くの避難所は、犬を受け入れるか
- 犬はどこで過ごすか(屋外のテント、校舎の一部など)
- ケージは持っていく必要があるか
- 犬の受付や登録のしかた
避難所以外で過ごす方法
環境省のガイドラインには、避難所のほかに次の過ごし方も挙げられています。
| 過ごし方 | 気をつけること |
|---|---|
| 自宅(在宅避難) | 家の安全を確かめてから。支援物資や情報は、必要に応じて避難所に取りに行く |
| 車の中 | 犬だけを残すときは車内の温度に常に注意し、十分な水を用意する。長い時間離れるときは安全な場所に移す。人のエコノミークラス症候群にも注意 |
| 親戚・知人に預ける | 被害が及ばない遠くの知人も候補に |
| 施設に預ける | 条件・期間・費用を確かめ、あとでもめないよう書面で取り決める |
「避難所が難しいなら、ここに預ける」という先を、ふだんから複数考えておくことが大切です。横浜市のガイドラインでも、一時預け先として、慣れている親戚・知人、動物病院、民間団体の施設などを挙げ、複数の預け先を探しておくよう勧めています。
犬ふぁんのデータで見る:ふだんから探しておきたい預け先
災害のあとに預け先を探すのは大変です。ふだんから使える預け先を知っておくと、いざというときの候補になります。犬ふぁんに載っている施設の情報から、預け先選びに関係する数字を見てみます(2026年10月10日時点の集計)。
| 預け先の情報 | 割合 | 母数(n) |
|---|---|---|
| ペットホテルのうち、毎日営業(定休日なし) | 72.8% | 曜日ごとの営業時間がわかる1,141か所 |
| ペットホテルのうち、日曜に営業 | 83.4% | 同じ1,141か所 |
| ペットホテルのうち、昼に一度閉める | 45.6% | 同じ1,141か所 |
| ペットホテルのうち、動物病院の併設の目印あり | 24.3% | 全1,549か所(目印でわかった施設だけ) |
この数字をもとに、近くで探す
動物病院でも、ホテル(預かり)の目印がついているところが251院ありました(全4,670院の5.4%。目印は付け漏れが多く、実際にはもっと多いはずです)。
この数字は、犬ふぁんが集めた名簿や公式サイトの店舗ページの範囲で数えたもので、全国の施設を代表するものではありません。また、災害のときに営業できるか、受け入れてもらえるかは、施設の被害や混み具合しだいです。
それでも、ふだんから次のことをしておくと、いざというときに頼みやすくなります。
- 近くのペットホテルや、預かりをしている動物病院を2〜3か所知っておく
- 一度は預けてみて、犬の情報を登録しておく
- ワクチンの証明書など、預けるときに求められる書類を確かめておく
- 少し離れた地域(被害が及びにくい場所)の預け先も調べておく
同行避難のときの犬の連れ出し方
環境省のガイドラインでは、犬を連れて避難するときの準備として、次のことが挙げられています。
- リードをつけ、首輪がゆるんでいないか、鑑札と狂犬病予防注射済票がついているかを確かめる
- 小型犬は、リードをつけたうえでキャリーバッグやケージに入れる
- 避難用品を持って、指定緊急避難場所へ向かう
まずは人が安全に逃げることが先です。あわてて転んだり、けがをしたりしないよう、落ち着いて行動しましょう。割れたガラスやがれきの上を歩かせると、犬が足をけがすることがあります。抱える、キャリーに入れるなど、道の様子に合わせて連れ出し方を変えます。
留守中に災害が起きたら
仕事や外出で家にいないときに災害が起きることもあります。家族の誰が犬を迎えに行くか、近所の人に頼めるかを、前もって話し合っておきましょう。家に戻れないときに備えて、親戚や知人に家の鍵を預けておく家庭もあります。
ふだんからやっておきたい備え
災害のときに困らないかどうかは、ふだんの準備で大きく変わります。
しつけと健康管理(環境省ガイドラインより)
- 「待て」「おいで」「お座り」「伏せ」などの基本的なしつけ
- ケージなどに入るのを嫌がらないよう、日ごろから慣らしておく
- 不必要に吠えないようにする
- 人やほかの動物をこわがったり、攻撃的になったりしないよう慣らす
- 決められた場所で排泄できるようにする
- 狂犬病予防注射(義務)とワクチン、寄生虫の予防
- シャンプーなどで体を清潔に保つ
避難所ではケージで過ごす時間が長くなりやすいので、キャリーやケージに慣らす練習は、今日から始められるいちばん身近な備えです。練習のしかたは、しつけ教室やトレーナーに相談する方法もあります。
避難訓練でのチェックポイント(環境省ガイドラインより)
- ハザードマップで、自宅まわりの危険な場所を確かめる
- ペットを受け入れる指定避難所を確かめる
- 避難所までの時間と、ガラスや看板が落ちてきそうな危ない場所を確かめる
- 通れないときの回り道を確かめる
- 避難所で、犬がどんな反応をするかを見ておく(慣れない場所では様子が変わる)
- 避難所が被災したとき、津波などで危ない場所にあるときの、次の避難先を考えておく
- 避難所に犬を連れて行けなくなったときの避難先や預け先を考えておく
自治体の防災訓練に、犬と一緒に参加できることもあります。
住まいの対策
- 家具やケージを固定し、倒れたり落ちたりしないようにする
- 窓ガラスに飛び散り防止のフィルムを貼る
- 犬が隠れて落ち着ける場所(ケージなど)を用意しておく
よくある質問
Q同行避難すれば、避難所で犬と同じ部屋にいられますか?
そうとは限りません。環境省のガイドラインでも、同行避難は同じ部屋で過ごすことを意味しないとされています。横浜市の例のように、人とは別の場所でケージに入れて過ごす形が多いので、住んでいる地域のルールを確かめてください。
Q住んでいる地域の避難所が犬を受け入れるか、どこで調べればいいですか?
お住まいの市区町村のホームページや防災マップ、防災担当の窓口で確かめてください。自治体や避難所によって対応が違います。
Qフードは何日分備えればいいですか?
環境省のガイドラインでは、少なくとも5日分、できれば7日分以上が例として挙げられています。療法食など手に入りにくいものは、多めにあると安心です。
Q避難所にケージは置いてありますか?
置いていないことがあります。横浜市のガイドラインでは、避難場所にはフードやケージなどペット用品の備蓄はないとしています。キャリーやケージは自分で用意しておきましょう。
Q大型犬で、キャリーに入らない場合は?
首輪とリード(予備も)をしっかり用意し、避難所でつないでおく場所があるか、車で過ごすか、預け先はどこかを前もって考えておきましょう。横浜市のガイドラインでは、大型の動物は災害が起きてから預け先を探すのがとても難しいので、事前に確保するよう案内しています。
参考にした情報
- 環境省「ペットの災害対策」
- 環境省「災害、あなたとペットは大丈夫?人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」(持ち出す際の優先順位、しつけと健康管理、避難訓練のチェックポイント、発災時の行動)
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年3月)
- 環境省「『人とペットの災害対策ガイドライン』の改訂案に係る意見の募集について」
- 環境省「『人とペットの災害対策ガイドライン』の改訂等に係る検討会」
- 環境省「マイクロチップの装着・登録」
- 横浜市「災害時のペット対策(震災)」(災害時のペット対策ガイドライン 震災編)
- 犬ふぁん 施設データの集計(ペットホテル・動物病院の営業時間と目印、2026年10月10日時点)
内容は2026年10月に確かめたものです。
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