まず結論:相手の手当てと受診のすすめ → 連絡先の交換 → 保健所への届け出と犬の検診
愛犬が人をかんでしまったら、慌てず、次の順で動きます。
- まず犬を離してつなぎ、相手のけがを気づかう。 応急の手当てをし、医療機関で診てもらうようすすめます。必要なら救急車を呼びます
- 連絡先を交換する。 名前・電話番号のほか、犬の登録(鑑札)や狂犬病の予防注射のことを相手に伝えられるようにします
- 事故が起きた場所の保健所に届け出る。 東京都は24時間以内、埼玉県は条例で届け出を決めています。決まりは自治体ごとなので、その場所の保健所に電話で確かめます
- かんだ犬を、獣医師に検診してもらう。 狂犬病の疑いがないかの検診で、東京都は48時間以内、埼玉県は「直ちに」と案内しています。回数や日にちは獣医師の指示に従います
- 費用の話は、落ち着いてから。 入っている保険に、人にけがをさせたときの補償(個人賠償責任)がついていないか確かめます
今日のうちにするのは、相手の受診の確認、保健所への電話、かかりつけの動物病院への電話の3つです。
いま困っているなら、近くで探す
現在地から近い順に出ます。位置情報が使えないときは、エリアから選べる一覧が開きます。行く前に電話で確かめてください。
その場ですること
1. 犬を離して、つなぐ
まず、犬を相手から離し、リードを短く持つか、キャリーやクレートに入れます。ほかの人や犬がいれば、近づかないように声をかけます。東京都の条例も埼玉県の案内も、事故が起きたら飼い主は応急の手当てと新たな事故を防ぐ手立てをとるよう求めています。
犬を叱りつけたり、たたいたりすると、興奮してさらにかむことがあります。まずは静かに距離をとります。
2. 相手のけがを気づかい、受診をすすめる
- 「大丈夫ですか」と声をかけ、まず謝る
- 出血しているときは、清潔なタオルやハンカチを渡す
- 医療機関で診てもらうよう、はっきりすすめる。 小さな傷に見えても、受診をすすめます
- けがが重そうなとき、相手が動けないときは、迷わず119番で救急車を呼ぶ
かまれた人には、犬の狂犬病の予防注射の状況を知りたい人が多くいます。注射済票(その年の予防注射の札)や、ワクチンの記録をスマホで見せられるようにしておきましょう。東京都は、国内では狂犬病の発生がないこと、飼い主がわかっていれば飼い主の責任で犬を獣医師に検診してもらうことを、かまれた人向けに案内しています。
3. 連絡先を交換し、記録を残す
相手と別れる前に、次のことを確かめます。
| 確かめること | なぜ |
|---|---|
| お互いの名前と電話番号 | 受診の結果や費用の話を、あとでするため |
| 事故の日時と場所 | 保健所への届け出に要る |
| どんな状況だったか(散歩中、玄関先、ドッグランなど) | 届け出と、保険の相談に要る |
| 相手が受診する医療機関(わかれば) | あとで受診したかを確かめるため |
| 目撃した人がいれば、その人の連絡先 | 状況を説明するときの助けになる |
その日のうちに、時刻・場所・まわりの様子・犬のリードの状態などをメモし、できれば場所の写真も撮っておきます。記憶はすぐあいまいになります。
保健所への届け出:決まりは自治体ごと
飼い犬が人をかんだときの届け出は、都道府県や市の条例で決められていることが多く、期限や出し方が自治体ごとに違います。2つの例を挙げます。
| 東京都 | 埼玉県(朝霞保健所の案内) | |
|---|---|---|
| 届け出の期限 | 事故が起きたときから24時間以内 | 案内に期限の記載はない。まず保健所に連絡し、事故届出書を出す |
| 出す先 | 事故が起きた場所の保健所など(23区は区の保健所、多摩地域は都の動物愛護相談センター多摩支所や市の保健所) | 保健所(メールで提出) |
| オンライン | 届出書をオンラインでも出せる | 届出書・鑑札と注射済票の画像・狂犬病鑑定書の画像をメールで送る |
| 届け出をしないと | ― | 条例違反となり、3万円以下の罰金または科料の対象 |
東京都の「動物の愛護及び管理に関する条例」第29条は、飼い主は、動物が人の生命や体に危害を加えたときは、応急の手当てと新たな事故を防ぐ手立てをとり、事故とその後の手立てについて、事故発生のときから24時間以内に知事に届け出なければならない、と定めています。
ポイントは次の3つです。
- 出す先は「事故が起きた場所」の保健所。 住んでいる場所と違う町で起きたら、その町の保健所に電話します
- 期限が短い。 東京都は24時間以内です。休日でも、まず電話で確かめましょう
- 鑑札と注射済票の情報が要る。 埼玉県は、届け出に鑑札と注射済票の画像を付けるよう案内しています
「(事故が起きた市区町村名) 犬 咬傷事故 届出」で調べると、その自治体の案内が見つかります。
犬の登録や予防注射をしていなかったら
埼玉県は、登録をしていない犬、狂犬病の予防注射をしていない犬について、狂犬病予防法の違反になる場合があり、すぐに役所に連絡して登録や注射をするよう案内しています。いまからでも、住んでいる市区町村に連絡してください。手続きは犬の登録と鑑札にまとめています。
犬の検診:狂犬病の疑いがないかを獣医師に診てもらう
人をかんだ犬は、狂犬病の疑いがないか、獣医師に検診してもらうことが決められています。
- 東京都:事故発生のときから48時間以内に検診させなければならない(条例第29条第2項)
- 埼玉県:直ちに検診を受ける。検診の回数や日は獣医師の指示に従う。発行される「狂犬病鑑定書」は飼い主が保管し、1回目の鑑定書の画像を届け出に付ける
すること:
- かかりつけの動物病院に電話し、「人をかんだので、狂犬病の検診を受けたい」と伝える
- 予約をとって、指示された日に連れていく(1回で終わらないことがあります)
- 鑑定書などの書類は、なくさないように保管する。保健所への届け出や、相手への説明に使います
かかりつけが休みのときは、近くの動物病院に電話して、検診を受けられるか聞いてください。上のボタンから、いま開いている近くの病院を探せます。
相手との話し合いと、費用
費用はだれが払う?
民法718条は、動物の占有者(飼い主など)は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う、と定めています(相当の注意をもって管理していたときは別、という但し書きがあります)。相手の治療費などは、飼い主が負担することになるのが一般的な考え方です。
具体的な金額や分け方は、ケースによって大きく違います。
- 治療費は、相手の受診の領収書をもとに話すのが基本
- 通院が続くときは、終わったころにあらためて話す
- 話がまとまらないとき、相手の要求に納得できないときは、自治体の法律相談や弁護士に相談する
保険を確かめる
人にけがをさせたときの賠償を補償する「個人賠償責任保険」は、自動車保険や火災保険、クレジットカードなどの特約としてついていることがあります。ペット保険に特約でついていることもあります。
- 入っている保険の契約内容を見て、個人賠償責任の補償がついているか確かめる
- ついていたら、示談の約束をする前に保険会社に連絡する(補償の条件や手続きを聞く)
- 事故のメモ、相手の領収書、保健所への届け出の控えをとっておく
補償の範囲や条件は保険会社と契約によって違います。かならず保険会社に確かめてください。
謝り方
その場で謝ることは大切です。そのうえで、後日あらためて連絡し、けがの様子を聞きます。相手の気持ちを考えて、連絡の時間や回数はほどほどにします。お見舞いの品などは、相手との関係や状況で考えましょう。
もう二度と起こさないために
かんだ場面をふり返る
どんな場面でかんだのかを書き出すと、次にどうすればいいかが見えてきます。
| どんな場面だったか | 考えられる手立ての例 |
|---|---|
| 玄関や門で、配達の人や来客に | 来客のときは、犬を別の部屋やケージに入れておく |
| 散歩中、すれ違った人に | リードを短く持つ。人の多い時間や道を避ける |
| 子どもが手を出したとき | 知らない人に「さわらないでください」と先に伝える |
| ドッグランや公園で | 混んでいる時間を避ける。呼び戻しができるまで放さない |
| 体をさわられたとき | 痛みなど体のことが関わることもあるので、動物病院に相談する |
専門家に相談する
かむことが続く、理由がわからない、という場合は、ひとりで抱えこまないでください。
- 動物病院:体の痛みや不調がかむ行動に関わっていないか、相談する
- しつけ教室・トレーナー:場面に合わせた練習のしかたを教えてもらう
近くのしつけ教室は一覧から探せます。
子犬の甘噛みのことなら子犬の甘噛みのしつけに、ドッグランで人や犬とトラブルにならないためのことはドッグランのマナーにまとめています。かみ癖のある犬を入れないと規約に書いているドッグランも多いので、ドッグランに入れない犬の条件も確かめておきましょう。
鑑札・注射済票・連絡先を整えておく
事故のあとの手続きは、犬の登録と狂犬病の予防注射がすんでいると、ずっと早く進みます。鑑札と注射済票を犬につけ、写真をスマホに入れておきましょう。
ドッグランで犬どうしのけんかになったときの動き方は、こちらにまとめています。
よくある質問
Q相手のけがが小さくても、保健所に届け出るの?
東京都の条例は、犬が人の体に危害を加えたら24時間以内に届け出るよう定めていて、けがの大きさで分けていません。決まりは自治体ごとに違うので、事故が起きた場所の保健所に電話して確かめてください。
Q家族をかんだときも届け出が要る?
自治体の決まりによります。事故が起きた場所の保健所に電話して確かめてください。家族でも、けがのことは医療機関に相談しましょう。
Q犬の検診はいつまでに受ければいい?
東京都は事故発生から48時間以内、埼玉県は「直ちに」と案内しています。回数や日にちは獣医師の指示に従ってください。まずかかりつけの動物病院に電話しましょう。
Q治療費は全部払わないといけない?
民法718条で、飼い主は犬が他人に加えた損害を賠償する責任を負うとされています。金額や分け方はケースで違うので、入っている保険の会社や、自治体の法律相談などに相談してください。
Q犬が処分されることはある?
届け出と検診は、狂犬病の疑いがないかを確かめ、事故の再発を防ぐための手続きです。そのあとの扱いについて不安があれば、届け出のときに保健所に聞いてください。
参考にした情報
- 東京都保健医療局 動物愛護相談センター「動物による事故」(東京都動物の愛護及び管理に関する条例 第29条) https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/douso/kansen/kousyou.html
- 埼玉県 朝霞保健所「飼い犬が人を咬んでしまった」 https://www.pref.saitama.lg.jp/b0702/doubutu-gaityu/inugakanda.html
- e-Gov法令検索「民法」第718条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
(いずれも2026年10月に確認)
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