まず結論:「引っ張ると進めない、ゆるむと進める」を毎回同じに
散歩で犬がぐいぐい引っ張るのは、多くの場合「引っ張ると前に進める」と犬が覚えているからです。犬は悪気があって引っ張っているわけではありません。行きたい方向に早く行けた、という経験が積み重なって、くせになっています。
練習の考え方はシンプルです。
- 引っ張ってリードが張ったら、止まる(前に進めない)
- リードがゆるんだら、進む(行きたいほうへ行ける)
- 飼い主の横にいると、ほめられる・おやつがもらえる
これを家族みんなで、毎回同じように続けます。1回の散歩で直るものではありません。数週間かけて少しずつ変わっていくものと考えて、気長に取り組みましょう。
この記事では、引っ張る理由、練習の前に見直す道具と持ち方、3つの基本の練習、続けるための組み立て方、そしてドッグランや観光地で「飼い主が制御できること」が求められる実例まで、順番にまとめます。
なぜ引っ張るのか:理由で対策の重点が変わる
同じ「引っ張る」でも、理由によって対策の重点が変わります。まずは、自分の犬がどんなときに引っ張るかを1週間ほど観察してみましょう。
| よくある理由 | こんなときに多い | 合う工夫 |
|---|---|---|
| 早く行きたい | 家を出た直後、公園の手前 | 止まる練習、出発前に落ち着かせる |
| においをかぎたい | 草むら、電柱 | 「かいでいい時間」を決める |
| 気になるものがある | 犬、人、自転車、鳥 | 距離をとる、飼い主に注意を向ける |
| 運動や遊びが足りない | 散歩が短い、家で遊ばない | 遊びや頭を使う時間をふやす |
| 不安・こわい | 大きな音、車通りの多い道 | 静かな道で練習、無理をさせない |
こわがって逃げようとして引っ張る場合は、叱ったり強く引き戻したりすると、散歩そのものが嫌いになることがあります。その場合は「引っ張りを直す」より先に、静かな道や時間帯を選んで、外で落ち着ける経験を増やしましょう。
犬の性格や体の大きさ、年齢によって、練習の進み方には大きな個体差があります。ほかの犬と比べず、その子のペースで進めてください。
練習の前に:リードの長さと持ち方を見直す
練習の効果は、道具と持ち方で大きく変わります。
リードは「短めに、ロックして」
東京都港区の案内では、リードが長すぎると「急な時に犬を引き寄せられなかったり、自転車や歩行者が伸びたリードにつまずいてしまうため危険」とし、「伸縮タイプのリードを使うときは短い状態でロックをかけましょう」と呼びかけています。
引っ張りの練習中は、伸び縮みするリードはおすすめしません。引っ張るとリードが伸びて前に進めてしまうので、「引っ張ると進める」という覚え方が強くなりやすいからです。練習中は長さの変わらないリードを使い、手に巻きつけずに、ひじを軽く曲げた位置で持ちます。
金具と首輪・ハーネスの点検
国民生活センターは、散歩中にリードのナスカン(首輪とつなぐ金具)が外れて犬が逃げ、追いかけた飼い主が転んでけがをした相談を受けてテストを行いました。犬が首をふる動きを再現すると、テストしたリードのすべてでナスカンが外れることが確かめられた、と公表しています(2019年)。そのうえで、犬から目を離さないこと、ロック機能のある金具を選ぶことなどをすすめています。
引っ張る犬は、金具や首輪に強い力がかかります。次の点を、練習を始める前に見ておきましょう。
- 金具が開きにくい形か、ロックがあるか
- 首輪・ハーネスのサイズが合っているか(すっぽ抜けないか)
- リードや縫い目がすり切れていないか
首輪とハーネスのどちらが合うかは、犬の体格や引っ張り方で変わります。お店で試着して、抜けにくいサイズを選びましょう。
3つの基本の練習
練習1:止まって待つ
いちばん基本で、どの犬にも使える方法です。
- リードを短めに持ち、手を体の近くに置く
- 犬が引っ張ってリードがピンと張ったら、その場で止まる
- 声はかけず、犬がこちらを振り返るか、リードがゆるむのを待つ
- ゆるんだ瞬間に「よし」と言って、また歩き出す
ポイントは、リードを引き返さないことです。引き合いになると、犬はもっと強く引っ張ろうとします。飼い主は「木」になったつもりで止まるだけです。
はじめは数歩ごとに止まることになり、散歩がなかなか進みません。最初の1〜2週間は「距離を歩く」より「練習の時間」と割り切ると、気持ちが楽になります。
練習2:向きを変える
止まって待つだけでは落ち着かない子には、向きを変える方法も合わせて使います。
- 犬が引っ張りはじめたら、明るく声をかけて反対方向へ歩き出す
- 犬がついてきて横に来たら、ほめる(おやつを少し)
- また元の方向へ歩き出す
「飼い主がどっちに行くかわからないから、見ていよう」と犬が思うようになると、自然と横を歩くことが増えます。急に向きを変えると犬の首やからだに強い力がかかるので、声をかけてから、ゆっくり向きを変えるのがコツです。
練習3:横にいると「いいこと」がある
引っ張らない練習だけでなく、「飼い主の横を歩くのは楽しい」と教えることも大切です。
- まずは家の中や庭など、気が散らない場所で練習する
- 飼い主の左側(右でもよい。決めたら変えない)に来たら、おやつ
- 数歩いっしょに歩けたら、またおやつ
- できるようになったら、家の前、静かな道、と少しずつ場所を広げる
おやつはふだんのフードの一部を使うと、食べすぎを防げます。1日の量から散歩の分をとり分けておきましょう。
気になるもの(犬・自転車・鳥)が来たとき
ほかの犬や自転車が見えたとたんに飛び出す子は、「止まって待つ」だけでは間に合わないことがあります。そんなときは、次の順番で対応します。
- 気になるものに先に気づいたら、早めに道の端へ寄るか、向きを変えて距離をとる
- 犬がそれを見ても飛び出さずにいられる距離で立ち止まる
- 飼い主のほうを見たり、落ち着いていられたりしたら、すぐほめておやつ
- 少しずつ、落ち着いていられる距離を縮めていく
「近づいても平気」を急いで教えようとせず、平気でいられる距離から始めるのがコツです。すれ違いが苦手なうちは、人や犬の少ない時間帯や道を選ぶのも立派な工夫です。
練習を始める前のチェック
- 練習中に使うリードは、長さの変わらないものを用意した
- 首輪・ハーネスのサイズと金具を点検した
- 散歩用のおやつ(フードの一部)を小分けにした
- 家族で「引っ張ったら止まる」「横にいたらほめる」をそろえた
- 最初に練習する場所(家の中・家の前など)を決めた
練習を続けるための組み立て方
場所のレベルを少しずつ上げる
家の中でできることが、外でいきなりできるとは限りません。気が散るものが少ない場所から、段階を踏んで進めます。
| 段階 | 練習する場所 | 次へ進む目安 |
|---|---|---|
| 1 | 家の中・庭 | 横について数歩歩ける |
| 2 | 玄関の前・家の近くの静かな道 | 止まるとすぐリードがゆるむ |
| 3 | いつもの散歩コース | 引っ張りが減ってきた |
| 4 | 公園・人や犬が多い道 | 気になるものがあっても戻れる |
うまくいかなくなったら、1つ前の段階に戻ってかまいません。
散歩の前と途中の工夫
- 出発前に落ち着かせる:リードを見ただけで大興奮する子は、玄関で「おすわり」をして、落ち着いたらドアを開ける流れを毎回つくる
- 「においタイム」をつくる:ずっと我慢させるより、「よし」の合図でかいでいい時間をつくり、終わったらまた横を歩く
- 練習は短く:散歩の最初の5〜10分だけ練習に集中し、あとはふだんどおり歩く、という分け方でもよい
- 家族でルールをそろえる:誰かが引っ張られるまま歩くと、犬は「この人なら進める」と覚えてしまう
記録をつける
「今日は何回止まったか」「どこで引っ張ったか」を簡単にメモしておくと、少しずつ変わっていることに気づけます。変化がゆっくりでも、記録を見ると続ける気持ちを保ちやすくなります。
犬ふぁんのデータで見る:「飼い主が制御できること」が求められる場所
引っ張りの練習は、毎日の散歩のためだけではありません。ドッグランや観光地でも、「飼い主が犬を制御できること」がルールとして書かれています。
ドッグランの規約
犬ふぁんが公式ページで規約まで確かめたドッグラン(主に自治体・公園の公営ドッグラン)のうち、「入れない犬」の条件が書かれていた23か所を数えると、「飼い主の指示を聞けない・制御できない犬」を入れない犬として挙げていたのは12か所(52.2%)でした。
たとえば、都立駒沢オリンピック公園のドッグランでは、「しつこく他の犬を追い回すなど、飼い主の指示を聞けない・飼い主が制御できない犬」を利用できない犬に挙げています(公式ページより)。
都立舎人公園のドッグランでは、玩具やボールの使用に加えて、フレキシブルリード(伸縮リード)・ロングリードの使用も禁止とされています(公式ページより)。
規約まで確かめたドッグラン23か所の地図
東京都の18か所・うち12か所が「指示を聞けない犬はNG」
指示を聞けない犬はNGそのほか
- 神代植物公園ドッグラン東京都調布市「飼い主の指示を聞けない・飼い主が制御できない犬」
- 城北中央公園ドッグラン東京都板橋区「飼い主の指示を聞けない・飼い主が制御できない犬」
- 木場公園ドッグラン東京都江東区「飼い主の指示を聞けない・飼い主が制御できない犬」
- 小金井公園ドッグラン東京都小金井市「飼い主の指示を聞けない犬、飼い主が制御できない犬」
- 駒沢オリンピック公園ドッグラン東京都世田谷区「噛む可能性があり飼い主が制御できない犬、噛み癖のある犬、闘犬の訓練を受けた犬など、他の犬や人…」
- 水元公園ドッグラン東京都葛飾区「興奮が高すぎて、安全の確保や制御が難しいと判断される犬」
練習の成果を試しに、近くのドッグランへ。
一覧から探す →観光地のルール
旅先でも同じです。静岡県伊東市の大室山登山リフトのガイドラインでは、施設内では1メートル以内のリードを付けるよう求めています(大室山リフトの公式ページより)。
また、東京都の案内では、公共の場では必ずリードをつけること、犬の放し飼いは都の条例で禁止されていることが書かれています。リードは「つけていればよい」ではなく、短く持って犬を自分のそばにいさせられることが、出かけ先のマナーの土台になります。
うまくいかないときは
力が強くて危ない
中型犬・大型犬で、飼い主が転びそうになるほど引っ張る場合は、ひとりで練習を続けるのは危険です。ドッグトレーナーやしつけ教室に一度見てもらうと、その子に合った練習の順番や道具を教えてもらえます。
叱っても変わらない
リードをぐいっと引いて叱る方法は、犬がこわがったり、散歩が嫌いになったりすることがあります。引っ張ったら止まる、ゆるんだら進む、横にいたらほめる、の組み合わせで教えましょう。
外ではおやつを食べない
外に出ると気が散って、おやつに見向きもしない子もいます。その場合は、まだその場所の刺激が強すぎるサインです。家の中や家の前など、おやつを食べられる場所まで練習の段階を戻しましょう。ほめ言葉やなでること、「においをかいでいいよ」の合図を、ごほうびとして使う方法もあります。
急に引っ張り方が変わった
今まで落ち着いて歩けていたのに、急に引っ張る・歩きたがらないなど、様子が変わったときは、体調が関係していることもあります。気になるときは動物病院に相談しましょう。
よくある質問
Q子犬のうちから練習したほうがいいですか?
早いほうがくせになりにくいと言われます。散歩デビューの前から、家の中でリードをつけて横を歩く練習をしておくと、外でも始めやすくなります。
Q成犬になってからでも直りますか?
時間はかかることがありますが、練習で変わる犬は多いです。毎回同じ対応を家族みんなで続けることがいちばん大切です。
Q伸縮リードを使ってもいいですか?
引っ張りの練習中は、長さの変わらないリードがおすすめです。伸縮リードを使うときは、港区の案内のように短い状態でロックをかけましょう。ドッグランによっては伸縮リードを禁止しているところもあります。
Qどのくらいで効果が出ますか?
犬の性格や練習の回数で大きく変わります。数週間たっても変わらないときは、ドッグトレーナーに相談してみてください。
参考にした情報
- 港区「リードをして散歩しましょう」 https://www.city.minato.tokyo.jp/seikatsueiseisoudan/sanpo2.html
- 東京都保健医療局「犬の飼い主の皆様へ」(リードの着用、放し飼いの禁止) https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/aigo/dog/dog01
- 国民生活センター「犬用リードが外れる事故に注意(相談解決のためのテストから No.133)」(2019年10月24日公表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20191024_2.html
- 大室山登山リフト「ガイドライン」(ペット同伴のルール) https://omuroyama.com/om2021/wp/wp-content/themes/omuro2021/guidelines/
- 犬ふぁん 施設データの集計(ドッグランの利用ルール。規約まで確かめたドッグランのうち、入れない犬の条件が書かれた23か所。2026年10月10日時点。各ドッグランの例は、犬ふぁんが公式ページで確かめた規約の要約)
(いずれも2026年10月に確認)
この記事に関係する施設を探す
いる場所の近くで探す